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58話 コード

last update 公開日: 2026-07-31 09:57:15

タブレットに新しい情報が追加される。九条征哉が頷いて見せる。私がそれを開くと、表示されたのは見た事の無い暗い部屋……?

(いいえ、知ってるわ、この部屋)

タブレットに映し出されている部屋は、紛れもなく私のお母様の使っていた部屋だ、あの離れの。

「荒らされているのか、時間経過とともに荒れたのか……」

九条征哉がそう呟く。私は画像を見ながら言う。

「両方ね」

この部屋の惨状を見た事がある。あれはまだ私が幼かった頃。

華瑛が一ノ瀬の家に入り込み、お母様の使っていたあの部屋の中から色々な物を処分すると言って、持ち出したのだ。その当時の私は文字通り、処分するのだとばかり思っていたけれど。

華瑛のあの隠された小部屋の存在を知ってしまった今、お母様の私物はあの小部屋に移されているのだろうと分かる。画面をスクロールする。

暗い部屋の中で浮き立つようにドレッサーの鏡が光を反射している。その鏡には何かが書かれている。

「You belong to me forever……」

それを読んでゾッとする。

あなたは永遠にわたしのもの……?

九条征哉を見上げる。

「これって一体……」

私がそう言うと、九条征哉も
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  • 灰になった令嬢は宿敵の腕の中で牙を剥く   58話 コード

    タブレットに新しい情報が追加される。九条征哉が頷いて見せる。私がそれを開くと、表示されたのは見た事の無い暗い部屋……?(いいえ、知ってるわ、この部屋)タブレットに映し出されている部屋は、紛れもなく私のお母様の使っていた部屋だ、あの離れの。「荒らされているのか、時間経過とともに荒れたのか……」九条征哉がそう呟く。私は画像を見ながら言う。「両方ね」この部屋の惨状を見た事がある。あれはまだ私が幼かった頃。華瑛が一ノ瀬の家に入り込み、お母様の使っていたあの部屋の中から色々な物を処分すると言って、持ち出したのだ。その当時の私は文字通り、処分するのだとばかり思っていたけれど。華瑛のあの隠された小部屋の存在を知ってしまった今、お母様の私物はあの小部屋に移されているのだろうと分かる。画面をスクロールする。暗い部屋の中で浮き立つようにドレッサーの鏡が光を反射している。その鏡には何かが書かれている。「You belong to me forever……」それを読んでゾッとする。あなたは永遠にわたしのもの……?九条征哉を見上げる。「これって一体……」私がそう言うと、九条征哉も苦笑している。「これは予想外だな」私も九条征哉も今までずっと華瑛は私の母である香織を憎んでいるものとばかり思っていた。見合いとは言え、婚約も済んでいた相手である一ノ瀬恭介が一方的に懸想して、婚約を破棄してまで結婚した女性が自分の親友だったら。そう考えれば、自然とその悪意は親友だったお母様に向く筈だと思っていたのだ。けれど実際は全く違っていたのだとしたら?華瑛が一番、こだわっていたのはお母様との関係で、お父様はただの添え物だったとしたら……。九条征哉がタブレットの画面をスクロールする。次に現れたのは……銀色の……カプセル?「これ……」私がそう言うと九条征哉が頷く。「IDカプセルだな」画面をスクロールする。現れた画像にはその銀色のカプセルの中に入っていたであろう紙が映し出され、更にその後の写真にはその紙が開かれて書かれている文字列が見えた。KGBK-V10 / 0779-X-GN1それを見ても私には何の事か分からない。九条征哉を見上げると、九条征哉は微笑んでいた。「これが何か、分かるの?」そう聞くと九条征哉が頷く。「あぁ、分かるよ」九条征哉はそう言って、少

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  • 灰になった令嬢は宿敵の腕の中で牙を剥く   53話 凪野

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  • 灰になった令嬢は宿敵の腕の中で牙を剥く   6話 密偵

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  • 灰になった令嬢は宿敵の腕の中で牙を剥く   5話 業火と未練

    目の前で。オレンジの炎が燃え盛っている。夜空に映える炎のオレンジ色はその触手を天に伸ばし、更に炎自身が燃えるものを探している。炎の触手の先からは黒煙が立ち上り、夜空の星を覆い隠す。私を閉じ込めて、絶望の淵へ追いやった療養所という“檻”は、今はもう燃えながら歪み、崩れ落ち、灰と化して行く。「お嬢様」及川が私の横に立つ。「今この瞬間からお嬢様は灰になりました。もう一ノ瀬家の令嬢ではございません」全ては燃えて灰になった……私と一ノ瀬家の縁も、そして未練も全て燃えて灰になったのだ。思い出されるのは幼い頃の記憶――お母様が生きていた頃は……私もお父様に確実に愛されていた。お母様とお父様

  • 灰になった令嬢は宿敵の腕の中で牙を剥く   4話 絶叫

    及川は私を見つめ、頷く。「お嬢様、生き延びてください。それもあなたのお母様の最後の願いなのですから」そう言われて私はポロポロ落ちる涙を拭い、聞く。「私は、何をすれば?」及川が簡潔に言う。「時間がありません。今すぐにお嬢様のお召しになっている服とネックレスを外して頂けますか」及川はそう言って自分の足元にある遺体袋を見る。「この遺体にお嬢様の服を着せ、ネックレスをつけさせます。そうすればお嬢様は死んだ事になり、万が一にも生きている事が知られたとしても、その時にはお嬢様はここから遠い地へ離れている事でしょう」及川は私に紙袋を渡す。「着替えは中に」その紙袋を受け取る。漆黒のワン

  • 灰になった令嬢は宿敵の腕の中で牙を剥く   3話 一筋の光

    目が覚める……。チカチカと視界が霞む。寝かされている場所は……色味の無い部屋……? (ここは……どこ……?)(昨日のあれは……夢だった……?)微かな希望だった。昨日の夜の事は私を襲った悪夢、そう思いたかった。けれど。

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